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楊芳

楊芳さんの中国語の勉強のサイト。文化の説明がわかりやすいです。

中国ドラマを見ていても感じましたが、どうして中国女性は強いのでしょう。男女同権または、それ以上ですね。古代からそうだったみたい。

中国ドラマに出てくる衣装と髪型、お化粧は興味深いのですが、詳しく額や頬のお化粧について説明してもらえて嬉しい。

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花钿 (huādiàn)」とは、古代中国の女性が額(眉間や額の中央)に施した花模様の装飾、またはその化粧法を指します。「钿」の字には、金や貝で飾る、または髪飾りという意味があります。文字通り、額を花のように華やかに飾るメイクアップだったのです。

その起源は古く、春秋戦国時代には既に存在したとも言われていますが、特に漢代から唐代にかけて大きく発展し、流行しました。当初は、宮廷の女性や貴族階級の間で広まりましたが、次第に一般の女性たちの間にも普及していったと考えられています。

花钿の色、デザイン、そして使われる材料は、時代と共に変化し、当時の美意識や流行を反映しています。

  • 漢代~南北朝時代: 比較的シンプルで、清楚・柔らかな印象が好まれました。顔料(鉛や硫化水銀など)を使って淡い色で小さな点や花の形を描くことが多かったようです。
  • 唐代 (黄金期): 国際色豊かで文化が爛熟した唐代は、花钿のデザインが最も華やかで多様化した時代です。
    • デザイン: 花だけでなく、鳥、蝶、魚、龍、鳳凰、雲など、様々なモチーフが登場。詩や絵画の影響も見られ、形も円形、菱形、扇形など多彩に。
    • 色: 赤、緑、金など、より鮮やかで大胆な色使いが増えました。
    • 材料: 顔料で描くだけでなく、金箔、銀箔、貝殻、玉、翠鳥の羽、魚の骨、雲母などを薄く切り抜いて貼り付ける「粘贴花钿 (zhāntiē huādiàn)」が流行。より立体的で豪華な装飾が可能になりました。
  • 宋代: 唐代の華やかさから一転し、シンプルで洗練されたデザインが好まれるように。真珠を使ったものなどが現れます。
  • 明代・清代: 時代が下るにつれて、花钿は徐々に簡略化・衰退していきますが、京劇などの化粧にはその様式が取り入れられ、特徴的な隈取の一部として残っていきます。明代には紅白黒緑など、清代には黒や赤紫色などが使われた記録もあります。

花钿の起源については諸説ありますが、有名な伝説として、三国時代の呉の王・孫権(Sūn Quán)と、彼が寵愛した鄧夫人(Dèng fūrén)の物語があります。ある日、孫権は最愛の鄧夫人の額に小さな茶色のシミを見つけ、大変心を痛めました。どうにかしてこのシミを隠し、彼女の美しさを保てないかと考え、宮廷の女性たちに相談します。そこで提案されたのが、シミの上に小さな花を描くことでした。孫権はこのアイデアを大変気に入り、早速実行させます。すると、花を描かれた鄧夫人は以前にも増して美しく魅力的に見え、孫権は大いに喜びました。この額の花飾りが評判となり、「花钿」として宮廷の女性たちの間に広まっていった、という逸話です。真偽のほどは定かではありませんが、花钿の由来を語る上でよく引き合いに出される美しい物語です。

花钿のデザインや材料は多岐にわたります。

  • 形状による分類:
    • 花形 (huāxíng): 最も一般的。梅、桃、蓮、菊など様々な花がモチーフに。
    • 点形 (diǎnxíng): シンプルな点状の飾り。初期や簡素なスタイル。
    • 動物・鳥形 (dòngwù/niǎoxíng): 蝶、鳥、魚、龍、鳳凰など。唐代に流行。
    • 幾何学模様・その他: 菱形、扇形、雲形など。
  • 材料による分類:
    • 顔料 (yánliào): 鉛、水銀朱、紅、緑色の顔料などで直接描く。
    • 金箔・銀箔 (jīnbó/yínbó):く延ばした金や銀を切り抜いて貼る豪華な印象。
    • 翠羽 (cuìyǔ): カワセミの美しい青緑色の羽。希少で高価。
    • 貝殻 (bèiké): 螺鈿(らでん)のように、貝殻を薄く加工して貼る。
    • 雲母 (yúnmǔ): キラキラと光る鉱物。
    • 玉 (yù): 翡翠などの玉製品。
    • 魚の骨 (yúgǔ): 加工して使われた例も。
    • 紙・絹 (zhǐ/sī): 色を塗った紙や絹を切り抜いて貼る。

貼り付けるタイプの花钿は、呵胶 (hējiāo)」と呼ばれる、魚の浮袋などから作られた接着剤で額に固定されました。剥がす時はお湯で温めると簡単に取れたそうです。

唐代は中国史上、特に文化が華やかに花開いた時代であり、女性の美意識も非常に高く、洗練されたメイクアップ技術が発展しました。その中でも「花钿」は、宮廷女官たちの間で大流行し、美しさを競い合うための重要な要素となりました。

当時の長安(現在の西安)は国際都市であり、西域などからの文化も流入し、それがメイクにも影響を与えました。大胆な色使い、多様なモチーフ、金箔や翠羽といった豪華な素材を用いた花钿は、唐代女性の開放的で自信に満ちた美しさ象徴しています。

彼女たちは、季節や行事、衣装に合わせて花钿のデザインを変え、個性を表現しました。例えば、春節には縁起の良い模様、観花(花見)の際には花のモチーフといった具合です。皇帝や高官に気に入られるため、あるいは同僚たちの中でより美しく見せるため、より複雑で、より珍しいデザインの花钿を求めたと言われています。

また、花钿だけでなく、白粉 (铅粉 qiānfěn) で肌を白く見せ、眉 (眉黛 méidài) を太く特徴的に描き、頬には紅 (胭脂 yānzhi)を濃く丸く入れ、唇には紅 (口脂 kǒuzhī) で小さな花びらのように描くといった、全体的なメイクアップとの調和も重視されました。花钿を美しく見せるためには、額の肌の手入れも欠かせなかったでしょう。

花钿が流行した唐代には、他にも特徴的な顔面装飾がありました。

  • 斜紅 (xiéhóng): こめかみや目の横に、三日月形や傷跡のような赤い線を描く化粧。太陽や月の満ち欠け、あるいは傷を隠すためなど、由来には諸説あります。
  • 面靥 (miànyè): 頬(えくぼの位置あたり)に、紅で小さな点を描く化粧。「靥」はえくぼを意味します。これも可愛らしさや魅力を引き立てるための装飾でした。

花钿、斜紅、面靥は、しばしば組み合わせて施され、唐代女性の個性的で華やかな美しさを演出していました。

花黄 (huāhuáng)」は、文字通り「黄色い花」という意味で、これも額に施された装飾(化粧)の一種です。花钿としばしば混同されますが、元々は異なる由来を持つとされています。その起源として有名なのが、南朝宋の武帝の娘、寿陽公主 (Shòuyáng gōngzhǔ) と蝋梅 (làméi – ロウバイ) の花の伝説です。

花黄の材料としては、主に以下のようなものが使われました。

  • 黄色の顔料: 額に直接、梅の花などの模様を描く。
  • 黄色い紙や絹: 花の形に切り抜いて貼る。
  • 金箔 (jīnbó): 金色に輝く豪華な花黄。

貼り付けるタイプのものは、花钿と同様に「呵胶」などの接着剤で額に固定されました。

歴史時代劇(古装剧 gǔzhuāngjù)において、花钿や花黄は登場人物の美しさや時代背景を表現するための重要な要素として頻繁に登場します。宮廷の貴妃や女官たちの額を飾る華やかな花钿は、視聴者に強い印象を与え、ドラマの世界観を豊かにしています。

例えば、『武則天-The Empress-』(武媚娘传奇 Wǔ Mèiniáng Chuánqí) や『月に咲く花の如く』(那年花开月正圆 Nà nián huā kāi yuè zhèng yuán)、『長安二十四時』(长安十二时辰 Cháng’ān shí’èr shíchén) など、多くの人気ドラマで様々な時代の花钿・花黄メイクを見ることができます。ドラマをきっかけに、これらの伝統メイクに興味を持つ人も少なくありません。

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数字の語呂合わせが面白いです。

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