好きなもの、心惹かれるもの

本、音楽、陶器、織物、手芸品をご紹介します。

インド童話集

講談社の70年近く前の童話集です。インド童話が、グリム童話アラビアンナイトのもともとのオリジナルであったことを初めて知りました。1910年生まれ、京大梵語学梵文学科を卒業された岩本裕氏の翻訳が美しいです。岩本氏は「日常佛教語」という辞書のような本で知りました。

かぐや姫のモチーフはインド起源、今昔物語、宇治拾遺物語もインドの物語。落語にすら、インド起源の話が入っているのだそうです。インドの物語は、5世紀頃からペルシア、アラビア、シリアなどを経てヨーロッパに伝わったとか。それでアラビアンナイトグリム童話の中には、インド起源の物語が多く含まれているのだそうです。

抒情詩「マハーバーラタ」に挿入されている物語が「ナラ王物語」「シャクンタラー姫の指輪」など王家の婚姻にまつわるお話が多いですね。天界と人間界の境がない。ギリシャ神話の神々は、かなり人間的ですが、インドでも同じです。

2年が経ちました、ではなく2万年が経ちました。みたいな時間の長さは、浦島太郎と同じ。人が神仙の世界に行ったり、逆に行いの悪い神様が人間界、畜生界に落とされたり。

言葉の威力に対する信仰があるとは、言霊と似ていますね。呪いをかけた人が示した時期まで、呪詛が解けない仕組みは、眠れる森の美女などに伝わっているんですね。

この本は、国会図書館のデジタルコレクションでも読めるようです。

iss.ndl.go.jp

ナラ王のものがたりですが、そもそもナラが奈良?と思ってしまいました。

スダナ王子の物語では、天女たちの住む天界が出てきます。水瓶に指輪を入れるエピソードは、似たようなエピソードがグリム童話のロバの皮などにも出てきますね。

サヌダサの冒険は、アラビアンナイトシンドバッドの冒険とよく似ています。

さんご姫は、竜宮城のお姫様に少し似ています。呪いの点では、アラビアンナイトによく似ています。
阿修羅のような手が5本ある?挿絵。