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捨てるということ

物を捨てる、ということは、過去を捨てることだな、としみじみ感じました。月日とともに、自分の体型もお月様のように、痩せたり、太ったりしますし、好みが変わって、良い素材なのに、気がのらないものがありますね。洋服なら、これを着ていた時、会った人は誰だった、とか、どこへ行った時に着た、とか、大抵思い出と洋服は繋がっています。

高かったし、気に入っているのに、出番が少なかったからもったいない、でも今あまり着るとも思えないスーツは、機会を作って何度か着てから処分したいなあと思います。夏冬の喪服と黒コートは、そのまま持っています。カシミヤやアルパカのコートは、何度も着ますし、着古すと、袖口などが擦れてくるので、いっぱい活躍してくれてありがとう、と充実した気分で捨てられます。シミが取れない服も、似合わなくなった服、気分が上がらない服も、捨てるのは簡単。迷ったら、試着して鏡に映った自分を見て、ダメだこりゃ、となるか、案外いいわね、と感じて決めます。スワトーのカットワーク刺繍のしてある、芸術的な絹のブラウスなんかは、現在製造されていないし、上質のウールや絹の布地は、本当に手に入らなくなりました。だから余計にもったいなくて捨てられない、という点はありますが、どこかで思い切らなくては。

5年ほど前からでしょうか、リバティプリントタナローン、という薄い絹のような光沢がある綿が大流行していました。とても着心地がよくて涼しくて蒸れないし、夏はすぐに乾くし、ハンガー干しならノーアイロンでいいので、重宝して何枚も持っています。手洗いしますが、多く着れば磨耗するから、よく着たものは捨てて、よそ行きにしていたものを普段着におろすとか、回しています。

下着から靴、寝具やカーテンに至るまで、見直すと、結構手間がかかります。シーツ類は綿か麻を買うので、切って、排水溝のぬめりを拭く使い捨て雑巾にしています。

私は自然素材が好きで、綿、麻、絹、カシミヤのファン。綿や薄い絹は、リメイクするのも良いです。フィリップ・モリス柄のエプロンの、下の方だけ長方形に切り、クロスに縫って宅急便を置く玄関の台に敷いたり。ワンピースの一部を利用して、スカートにしたり、手提げにしたり。アルパカのコートを捨てたとき、そのふわふわ感が好きだったので、綺麗な部分を切って、小さいショルダーバッグを作ったこともあります。

余すところなく、捨てきろうと思うと、エネルギー使いますね。玉ねぎをむくように、これはいらない、これもいらない、と減らしていき、翌日には、ああ、やっぱりこれもいらない、と。全力で捨てて、玄関に捨てるものの山ができて、更にそれをゴミ収集の日に道路に出して、ようやく回収されて、終わった〜というやれやれ感と、すっきりしたな、空間が清々しいな、という爽やかさ。今週月曜日から始めたお片付け、来週ゴミを出して完了です。

以前聞いた話で、毎年毎シーズン、3枚くらいの洋服を買い、そればかり着て、そのシーズンで捨てる女性。そういう暮らし方もあるのねぇ、と驚きました。冬物のコートなども同じなのかどうかまでは聞き漏らしました。特に夏物や、下着はそれでもいいですね。最近、欲しいわ、と一目惚れするお洋服に出会うことが少なかったので、私にはそのやり方は合わないのでは?と思っていました。そのシーズンの自分のエネルギーを、そのシーズンで捨ててしまって、毎シーズン新たに買い換えると、いつも新たな自分でそのシーズンを暮らすことができるのでしょうね。