ティリア・テペはウズベク語で、黄金の丘。
アフガニスタン北部のティリア・テペ遺跡の黄金の花飾りのついた宝冠や天使、精緻なネックレスなどは以前から知っていましたが、埋葬者についてはほとんど情報がありません。ナショナルジオグラフィックでは、元アフガニスタン国立博物館館長のオマラ・ハーン・マスーディ氏が以下のように説明しています。6基の墓に、女性5人と男性1人が埋葬されていたとのことで、1つの墓に1人ずつ。王と5人の妃なのか、詳細はわかりません。美しい写真の数々に見とれるばかりです。展覧会の図録も見ていないので、あくまでインターネット博物館などを参考に、6人の人間関係を想像してみました。
マスーディ氏の説明:
「年代でいえば、紀元前2100年ごろから3世紀ごろまでの工芸品で、アフガニスタン各地の遺跡から出土したものです。加えて、内戦時代に国外に流出した文化財のうち、日本で回収され、保管されていたものの一部も展示されます。展示の中心になっているのは、アフガニスタン北部のティリヤ・テぺ遺跡の出土品で「バクトリアの至宝」と呼ばれる黄金の宝飾品類です。それらは紀元前1世紀から1世紀ごろのものと推定されています。ティリヤ・テペの遺跡は、1978年にソ連とアフガニスタンの合同調査団が発見しました。遺跡は、おそらくは有力な遊牧民のものと思われる6基の墓で、女性5人と男性1人が埋葬されていました。「バクトリアの至宝」は、それらの墓に副葬品として納められていたものです。」
私の想像:王妃に男児が産まれなかった、もしくは王妃の男児は早死してしまい、この男性が王になった。または、正妃の息子とそれ以外の王子達の戦いのあと、この男性が勝利して王になった。5人の女性のうち一人の女性は王の母で、身分が高くなかったので前の王の墓のそばには葬られなかった。先に亡くなったので1号墳に葬られた。
このイラストを掲載しているサイトが2つありましたが、このように男女が1つの墓に埋葬されていたのではないのですね。あくまで、1人ずつ、それぞれの墓に埋葬されていました。
二匹のドラゴンの間に人がいる装飾品は、ペンダントかと思っていましたが、このイラストではイヤリングとして描かれています。男性は、トルコ石の象嵌の3本の剣と埋葬されているのですね。ベルトに9つもある丸い飾りを拡大した写真には、ライオンを倒す騎士が彫刻されています。
Pintestで見つけた写真が大きくて切れてしまいましたが、剣は繋がっています。ハートが細かくトルコ石で象嵌されています。下の方、四つ葉のクローバーのような形になっているのがよく見えます。卍があるのが不思議。左右の耳の部分には、羊の角が彫刻されているのでしょうか。
イヤリングもお揃いのハート型。
この動物のブレスレットは、いかにもスキタイの系統ですね。ドラゴンなのでしょうか。
インドっぽい印象を受けます。
裏側にも顔がある、とトーハクの1089ブログに写真が載っていました。
この有名なドラゴン・ペンダントですが、私には、この人物がスカートを履いている女性に思えたのですが、勇士ということになっています。何cmと書かれていないので、イヤリングサイズなのか、大きなペンダントサイズなのかも不明です。
男性被葬者の靴につけた飾り
可愛らしいアジアっぽい虎ですね。にっこり愛嬌があるので、ペットとして飼っていたのでしょうか?トルコ石だけでなく様々な色の貴石が象嵌されています。
王のベルト。獅子と勇士のモチーフ。
透し彫りになった部分があって、とても豪華な造り。
ケネス・ギャレット氏の剣の拡大写真 ナショナルジオグラギック2004年12月号から
初めてドラゴンとライオンであったことを知りました。
右の可愛らしくデフォルメされた羊さんがユーモラスです。作風が全然違いますね。
この日と月とお花の飾りも王妃のものなのでしょうか。スミソニアン・マガジンに掲載されています。他にも美しいガラスの写真があります。
ティリア・テペの近くにあるティリア・フロール遺跡出土の黄金の杯。右にバイキングのような人物が彫刻されていますが、ユーモラスですね。
https://www.metmuseum.org/exhibitions/listings/2009/afghanistan/photo-gallery
東京国立博物館も、Internet Museumとして載せています。
ティリア・テペ1号墳出土の女性の装身具
1番地味なので、もしかして、男性の被葬者の母でしょうか?
3号墳
右に霞んで見えているのが2つのドラゴンペンダントです。やはりイヤリングのサイズではないですね。
6号墳
トーハクさんのサイトに貼られた動画を静止して撮った写真です。5人の女性被葬者のうち、4人が撮影されたようです。この写真の女性だけが、マーガレットのようなお花がたくさんついた黄金の冠を被っていたのですね。ネックレスと、ドラゴンの2つのブレスレットもこの方の墓出土のようです。王妃でしょうか。
冠の中には、ハートが隠れていたんですね。
この女性のハートのイヤリングと凝ったネックレスもおしゃれ。
4号墳が王です。王は、ネックレスもしていたのですね。中央は黄金の飾りで、残りが透かしというか大きなチェーン状。ネックレスの左に、トルコ石と黄金の靴のバックルがあります。
このサイトによりますと、左2つは指輪で、ティリア・テペ遺跡からたくさん見つかったものだそうです。右はペンダントだそうです。
https://www.cemml.colostate.edu/cultural/09476/images/afgh05-207-09.jpg
西豪州美術館によれば、ティリア・テペ2号墳で見つかった指輪に描かれているのは、ギリシャのアテナ女神だそうです。
This ring depicts the Greek Goddess Athena, who was a popular subject among the nomads, probably because of her warlike nature. The name Athena is engraved in reverse at the left, indicating that the ring was intended as a seal. Her left hand appears to rest on her hip and at the same time hold a lance and a shield.
黄金のアフガニスタン展に行かれた方のブログがありました。詳しく出土の様子なども説明して下さっています。
もう1つ、興味深い指摘を片山徹氏がされています。ティリア・テペ出土のメダイヨンと、聖徳太子の手箱に表されている獅子が似ている、と。この小箱、初めて見ましたが、箱根の寄せ木細工のような感じですね。
画上、聖徳太子手箱。画下、アフガニスタン、ティリア・テペ出土インド・メダイヨンのギリシヤ神話ヘラクレス・ネメアの獅子。法隆寺とギリシヤ神話との関係立証。法隆寺五重の塔「鎌の謎」は冥界の神ハデス対策。マクレオドもギリシヤメアンダー文に注目。月読尊倭国。 pic.twitter.com/WL5AmEfTbm
— 片山徹 (@_9105294027642) 2019年9月3日
Pintestで見つけたティリア・テペの飾り。こちらは五つ葉のクローバーのような飾りに加えて、端にも小さなハートが。本当に精緻ですね。歩揺の飾りもついて、洋服に縫い付けた飾りなのか、髪飾りか、何でしょう。