今まであまり知られていなかった葛飾北斎の三女、お栄の浮世絵は知っていました。父娘が共作で西洋の陰影法や遠近法を駆使して絵を描いていて、それはオランダを介して可能だったという話を初めて知りました。シーボルトが北斎に注文して、カラフルで西洋的な日本画を描かせて、持ち帰っていたとは。シーボルトが、北斎に西洋の油絵を見せていたのかも。
また北斎晩年の、男浪、女浪が描かれている祭屋台天井画の周囲が非常に西洋的で、肩に翼を持つエンジェルまで描き込まれていたという初めて知る美術史。これもお栄との共作だと思います。少なくとも花の部分は。下記の動画は、埋め込みができなかったので、タイトルのみです。とても面白いです。
森遥子さんの晩年の作品、年老いた医師の美人の娘がわけあって遊女に売られ、江戸の役人に身請けされ、オランダ商館長をスパイする任務を命令される昔の小説を思い出しました。娘は父の手ほどきで、オランダ語の素養があったのです。彼女はカピタンの現地妻のような立場になり、オランダ人同士の会話などを立ち聴きしては、役人に報告していたのです。最後は彼女も役人も、捕まってしまったような記憶が。
お栄は着物の柄の描写がとても緻密なのが特徴の一つだそうです。
オランダ ライデン国立民族学博物館蔵
今回制作年代が、絵の中の丁稚の傍にある帳面に描かれていることが判明。1824年だそうです。
作品群がシーボルトの手に渡ったのは、4年ごとの江戸参府のときしかないと思われ、シーボルトの江戸参府は1826年。オランダ商館長(カピタン)として、それ以前にも江戸に来ているらしいのです。最初は二枚の絵を150両で購入したとか。もう2枚を半額に値切ったら、北斎が絵の具が高いので、金がないなら帰れ、と怒ったとか。
長野県小布施町 高井鴻山記念館(元高井鴻山の屋敷)
北斎の弟子で豪商であった高井鴻山の招きで、82歳から7年間で北斎は4回、娘お栄も2回は来た。父娘が滞在した離れの建物には、3か所にからくり抜け道があって、まるで忍者屋敷のようです。佐久間象山も何度か招いていた開国派だったとか。北斎は、身長6尺(180cm)もあったんですね。
wikiより
天保11年(1840年)、父熊太郎が病死し鴻山が当主となったが、経営・理財は全く不得意であった。三十代の頃、上田の活文(かつもん)禅師について禅を学んでおり、葛飾北斎と交遊が始まったのもこの頃であった。天保13年(1842年)の秋、北斎83歳のとき初めて小布施の鴻山(時に37歳)のもとを訪れた。鴻山は北斎の卓越した画才を見抜き、自宅に碧漪軒というアトリエを建てて厚遇し、北斎に入門した。北斎はこの時、一年余りも鴻山邸に滞在したという。鴻山は北斎を「先生」と呼び、北斎は、鴻山のことを「旦那様」と呼び合った。そして、弘化5年(1848年)、北斎(89歳)は四度目の小布施来訪時、岩松院の天井絵を完成させている。
高井鴻山の絵(下絵北斎)もすごいですね。
小布施北斎館
肉筆の鮮やかな天井絵が4枚、上町祭屋台に描かれている。
龍図
男浪図
上にリス、下に孔雀、右に獅子に似ていて甲羅のある生物が空色とピンクと番いでいますね。
女浪図
背中に羽のある天使が。高井鴻山はキリスト教徒だったのでしょうか???
リスもとてもリアル。
西洋に憧れ、手法を取り入れていた画家だったんですね。
サインが横向きに描かれ、筆記体のようになっている。
長野県小布施 岩松院 秀吉に仕えた福島政則公霊廟
本堂に奉納した大作21畳サイズの天井画 完成時北斎89歳
質の良い絵の具にお金を惜しまなかったらしい北斎。だから天井画は全く色褪せていない。
北斎こんな可愛い虎を描いてたんですね。
1990年米国ボストン美術館でお栄の優れた作品が見つかったそうです。戦後国内のコレクターから、米国に渡っていたのでしょうか。
鏡面美人図
この屏風は共作では。お寺の天井画と似ています。全体像は、今にも飛び立つ迫力です。
袱紗に描かれた獅子。牡丹の花を描いたのはお栄だと特定された。
1は見つかりませんでした。5は見られませんでした。
女北斎 Female Hokusai Ukiyoe 2/7 - YouTube
女北斎 Female Hokusai Ukiyoe 3/7 - YouTube
女北斎 Female Hokusai Ukiyoe 4/7 - YouTube
女北斎 Female Hokusai Ukiyoe 6/7 - YouTube
女北斎 Female Hokusai Ukiyoe 7/7 - YouTube
應為のサインが描かれた、お栄だけが描いた作品は少ないようです。着物の柄が細かくて凝っていたり、陰影がとても綺麗だったりするのは共作や、お栄さんの作品のようです。北斎のサインの方が売れたから、ということのようです。
お栄の直筆
手前後ろ姿の新造の簪が細かいタッチで描かれています。そして振袖の蝶々が儚い命や運命を表していて、着物裾から溢れている裏側は蜘蛛の巣まで描かれている。着物の柄が暗号のようになっているんですね。
三曲合奏図 ボストン美術館蔵
夜桜美人図 メナード美術館蔵
これも着物の柄が細かくて、共作では。
朝顔美人図
この陰影の付け方が、西洋的だと言われています。斬新な作品。これはお栄の作品。
ここには載せませんでしたが、春画もあるんですね。お栄さんは酒と煙草が大好き。父の絵の上に何度か火を落として後悔、禁煙したものの、やっぱりやめられなかったそうです。料理、掃除ができない父娘だったとか。通いのお手伝いさんがいたのか、弟子が弁当を届けていたんでしょうか。