昔の岩波書店や筑摩書房の児童書は、装丁が綺麗な上に、箱入りでした。「星の王子さま」「みどりのゆび」「三人のおまわりさん」「長くつしたのピッピ」「ドリトル先生シリーズ」「エルマーのぼうけん」その他も良かったのですが、エーリヒ・ケストナーの「二人のロッテ」「点子ちゃんとアントン」「エーミールと探偵たち」「エーミールと三人のふたご」「サーカスの小人」などの児童書がとても好きでした。箱に入っていたおかげで、ひとつのシミもなく、綺麗なままで保管できていました。
読み返してみて、またも、子ども時代に涙したのと同じページで泣けました。高橋健二氏の翻訳がとても良いと思うのです。汚れて捨ててしまった他のケストナーの本を買い直そうかと以前思いましたが、訳者が変わってしまっていることに気がつき、買わずにいます。
おそらくケストナー自身の体験から、少年が汽車で長旅をしたり、ギムナジウムの寄宿舎を舞台にした話がよく出てきます。それと、必ず貧乏な学生が出てきます。私も小学生6年から、一人で4時間の列車の旅をスーツケース持ってしていたので、余計に共感できたのかもしれません。
ドイツのギムナジウムを二箇所、外から見たことがあります。一つは宮殿近くで、くすんだピンクの壁でした。おしゃれな学校!と思いましたが、ラテン語またはギリシャ語が必修だと聞いたことがあります。
ケストナーの児童書には、必ず著者の、読者にあてた前書きがあるのです。あとがきには、「すべての子どもたちと、子どもの心を持った大人たちへ」という文があって、それが心に響きましたっけ。