今まで見た中国ドラマの中で、1番グッときたのがこちらです。ヒステリックな皇后や妃たちの争いや、懲罰シーンは見たくなくて、これは宮廷の中の血肉争いや汚職、暗殺シーンはやっぱりあるのですが、主人公二人がとにかく知的で、引き込まれて見ました。官僚の衣装を見て、兎の耳のような冠から、唐時代をモデルにした架空のお話かなと思います。科挙の様子、邸宅のインテリア、庭、衣装など美しいものを見ているのは楽しいです。筆記具や鍼を入れる竹?でできたバッグ類も初めて見ました。音楽も好きです。木製の楽器で効果音を出したあと、牛のモ〜っという効果音がコミカルでクスッとなります。エンディングのテーマソングの「明明」は、同じタイトルで3つあって、日本語の歌のタイトルでは明らかに、明瞭に、なんて考えられないので、面白いと思いました。
この相関図には、前皇帝が載っていませんが、南辰国の定王Liu Yanは次男皇子で、兄が皇帝の時代からドラマは始まります。ネタバレで書いてしまいますので、読みたくない方は、先にドラマをどうぞ。音声は中国語、字幕が英語と中国語で、幸いにも40話まで全部動画が見られます。最初字幕も中国語の動画しか見つけられなくて、ところどころ見ていたのですが、3分の1くらいしか意味が取れなかったので、英語字幕の動画を見つけて良かったです。わからないなりに、漢字だと英語では読み取れないニュアンスがわかって、楽しいです。
日本の時代劇といえば、鼠小僧とか将軍吉宗が平民に扮装しているものとか、遠山の金さん、水戸黄門が思い出されますが、遊女や入浴シーンとか小学生、中学生だった私が見るにはちょっと、というものが平気で放映されていました。中国の時代劇には、あまり際どいシーンはないのがいいですが、その代わり、拷問シーンは平気で出てきますね。このドラマは全体に上品なのも好きです。よく出てくるのが崖から落ちるシーン、死ぬシーンでは口から血が出るのがお約束らしいです。このドラマでは、崖から落ちても生還しています。毒薬も頻出です。
大体これを見たら、筋がわかる動画をアップしましたが、1から40話まで揃っています。
定王のすごく長いプロポーズのシーンがあるのが23話です。
兄の皇帝と弟の定王の母親は違う。周太后は長男の皇帝の産みの母で、側室を殺し、その側室子である定王をも幼少の頃から、何度も殺そうと画策してきた。兄弟の仲はとてもよく、兄の皇帝は弟の命を何かと守ってきた。5年前の敵国北涼との戦いでは、太后は北涼国にわざと定王の作戦地図情報を漏らして3万の自国兵を見殺しにした。しかし、定王は生きて帰還したため、またもや命を狙っている。今回はヒロインが漢方や鍼の知識を持っていて、偶然定王を助けて命を救ったことから二人の出会いが始まった。
定王は自分が殺されかかった原因の、毒を衣服に塗られた遊女の死体検視を灼華にさせたあと、科挙数日前に郊外へ遊女の父の骸骨状の死体検死もさせました。その時に王族だけが使える細い鍼の話が出てきて、それが凶器で亡くなっていると彼女は答えます。定王は、なぜそんな知識をこの小娘が持っているのか怪しいと思っています。
帰り道、刺客が二人を襲い、闘う定王がかっこいい。木の上にぴょんとジャンプする技まで。灼華も、白い粉の入った袋を敵に投げて目眩し。毒か?と聞く定王に、石灰粉です、と彼女は答える。途中で皇帝だけが派遣できる禁軍が到着して、刺客たちを倒す。疲れて歩けなくなった彼女を、定王がおんぶして行くシーンも可愛い。面倒見はいいのです。
「もし科挙の試験開始に間に合わなかったら?」と聞く彼女に、「次の試験まで3年養ってやる。」「もし落ちたら?」「一生養ってやる。」「合格したら?」「欲しいものをやろう。」「じゃ貴方の翡翠の飾りを下さい。」と馬車の中での会話も優しい。自分は科挙の試験官でもあり、彼女を前に乗せて、馬で駆けつけるシーンもいいですね。
科挙の皇帝の臨席での試験で、定王がわざと彼女の答案用紙に、硯を倒して墨をぶちまけてしまったエピソードがあり、優しい皇帝はそれを咎めず、口頭試験での彼女の答えに非常に満足して、三位での合格を決めます。帰り道、定王が提灯を持って現れ、灼華は硯をわざと倒したのは貴方でしょう?と咎めます。どれだけ長い期間私が準備してきたと思っているのか、と怒った彼女に、定王が深々と謝罪のお辞儀をしたのも印象的。そして約束通り、翡翠の飾りを彼女に渡して、「私に仕えても、それは成功への道ではなく、困難を伴うものなのだ。それでもよければ。」と言って去ります。
定王は太后に結婚しないよう強要されていて未婚。おそらく設定は30代くらい?灼華は17歳くらいでしょうか。人生50から60年の時代で、お嫁に行くのが16歳くらいと仮定したら、親の決めた結婚から逃走して、官僚になると決めてきた彼女はそのくらいかと思います。
祖父が王族専用の医院長で鍼の達人で、漢方薬の調合もオリジナルで作っていたことがあとからわかってくる。灼華の鍼の腕や漢方のセンスは、遺伝もあったのですね。灼華は、定王の命を3回鍼で救って、定王も2回暗殺者から彼女を救い、太后の私怨から鞭の刑や宮廷内の争いに巻き込まれた彼女を何度も救っています。
定王の産みの母を、灼華の祖父が作った毒薬で太后が殺し、証拠隠滅のため祖父をはじめ一族も殺されていたことも後から出てきます。定王が住んでいた定京での邸宅は、昔灼華の祖父が住んでいた邸宅だったのでした。
20日間で、北涼語を本で覚えて、書き方は定王が見本を見せるシーンがあります。まもなく北涼の第三王子の使節が南辰国を訪問します。歓迎の晩餐会で、「北涼随一の美女である、妹王女を皇帝への贈り物に。」と言い、皇帝が高齢だからと断ると、「贈り物は返せないので定王に」と王子が言い、定王が「それでは皇帝の養女としては」、というシーンがあります。
額田王は年配の百済王に嫁していて、兄の天智天皇と後から帰国していると小林惠子先生の著書にありました。また、美女二人を中国皇帝に献上したという文が史書にあり、美女とはその辺の美女ではなくて、皇女を指す、と小林先生が書かれていました。ドラマでは、南辰には人を贈り物にしない。という台詞がありますが、卑弥呼も奴婢を皇帝に送ったという史実があったと思います。奴婢は、兵士だったり何らかの技術を持った人物だったかと思います。
江南で、飢饉に対処した後、定王は灼華の恩師に会いに、陶器のやかんに入ったお酒を土産に一緒に行ったとき、とても幸せそうでした。この日、邪魔者がいなかったのだから、定王が告白したら、もっと早く二人の真意が伝わったのに。
太后だけが黒幕だったのではなく、定王の姪にあたる劉咬公主(前皇帝の娘で、やはり母親を太后が殺している)も、黒幕であることがわかってきます。彼女が仕組んだ、皇帝に媚薬を飲ませ、休ませている部屋に、灼華を騙して連れていき、外から鍵をかけた罠。定王が灼華の姿がないことに不審に思い、探してその部屋の外から会話を聞く。
灼華を好きな若い皇帝が、灼華に「好きな人がいるか?」と聞いて答えた彼女は頷き、「どんな人か」と問われて、「彼は貴族だけど理解があり、私の才能を最初から認めてくれた。彼のような人は世界のどこにもいない。彼のことを想うだけで、自分はどんな困難にも立ち向かえる。」と答え、面と向かって彼女からそんな言葉を聞いたことがなく、灼華と会話をしたり交際を申し込もうとする官僚たちに毎回軽く嫉妬していた定王は、内心嬉しくて仕方ない。救出に来た定王を見て、皇帝は灼華の想い人は、叔父だったのかと知る。
前皇帝の弟皇子である定王(のちに甥が皇帝に即位)が、醜聞を気にせず、女性が結婚したら任官を退職しなければならないため、慕灼華を娶るのではなく、事実婚しようと提案するシーン。その愛の告白がとっても長いのです。理論的に説明しているのですが。こんなふうに心から真摯に、プロポーズをするケースって何国人であろうと、古代でも現代でもあまり多くはないのでは。
朝礼で、敵側の官僚から定王と慕大人の仲が良すぎると批判され、皇帝の前で「私は、慕大人の婚外夫です。法律で禁止されていないのだから、結婚していない二人が事実婚でも問題はないでしょう。」と宣言したシーンはなかなか印象的です。通常の神経の男性では耐えられない恥でしょう。でも愛する彼女が、高級官僚をやめずに済む唯一の方法だから、そして他の誰にも嫁いでもらいたくないから、躊躇なくそれができる。そこがすごい。
皇帝も、自分と灼華を狙ったハニートラップ事件があったため、本当の叔父と灼華の関係を知っていたからこそ、ショックを受けることもなく、叔父には祖先の墓参りに行って反省せよ、灼華は給与1か月の減給と裁決した。この晩、邸宅を赤い布で飾り付けて、内々の結婚祝いをします。灼華が手縫いした香袋を、定王はすごく喜んで、すぐ服につけようとします。この晩に二人はようやく結ばれました。
兄皇帝とその長男皇太子を支えて、自分は同僚部下3万の兵を失った心身の傷を、定王が灼華と出会って命をお互いに救い、助け合ううちに、愛に目覚めていく様子を静かに見ていると、じ〜んとくるものがあります。ドラマの筋書きが上手いなと思います。
そこまで熟慮して時間をかけて愛情を育んだのに、兄皇帝が、母の太后に定王を殺すなと会話していて、どれだけ話しても母親が態度を変えないため、怒りで憤死してしまい、定王もショックで体調が一気に悪くなる。もう自分は長くないと、灼華を突き放し、自分が都で住んでいた屋敷は灼華の名義に変えて身辺整理をした上で、黙って越州の竹林が美しい別荘へ隠遁してしまう。ここはちょっと意外。12から15歳くらい年上の設定なのでしょうが。もうロマンティックな関係を持ちたくはない、今までのことは感謝している。と後から手紙だけ届けるのはちょっと一方的すぎる。
探し当てて訪ねてきた灼華を追い返すけれども、灼華も雨の中、入れてもらえるまで気絶するまで立ち続ける。一晩は泊めたものの、別れを告げた定王ですが、匂いから彼の体調が悪くなっていることに気がついた灼華が戻ってきて、今ならまだ治療が間に合う。私にも貴方を支えさせて下さいと言う彼女に、定王もそこまで自分が愛されていたのか悟って一筋の涙を流す。彼女の看病と鍼の治療が効果を出して、定王は健康を取り戻すのでした。
定王はけっこう謙虚ですね。若い彼女の重荷になりたくないから、身を引くと決めるなんて。でも皇弟であり将軍であった自分が、愛するとか守るという能動的な態度だけではなくて、愛される、鍼で命を救われるという受動的立場になって、受け取る幸せをしみじみ感じたのですね。
ちょっともやっとしたのが、劉咬公主の婚約者。北涼との戦い前に太后に呼ばれて、忠臣の将軍の家族を人質にとって脅し作戦地図を北涼に漏らして、3万の兵を見殺した実行者で、なぜか指先がフックのように改造されているのです。記憶を失い、北涼側にスパイとして使われている様子。また江南で、劉咬公主が反乱者に崖まで刀を持った北涼の流れ者10人くらいに追い詰められて殺されそうになるシーンも今ひとつわからず。なぜ北涼は、彼女を暗殺したいのか理由が不明でモヤってます。
自分の本当の敵が、太后以外のどの王族かわからなかったけれど、姪の公主がもう1人の黒幕であったことを突き止めて、定王の最終ターゲットが定まり、自分の命をかけての大芝居の計画を甥の皇帝と実行する。ここを突破できれば、ようやくこの国に平和が訪れるという希望を持って、灼華には内緒で毒酒による免罪の刑を受けるのです。ロミオとジュリエットではないですが、飲んだら仮死状態になり、数日後に生き返るという薬って存在するんでしょうか?「国子監は花ざかり」という他の中国ドラマにも、そのような死んだふりをするシーンがあるのです。このドラマもお勧め。こちらはコメディタッチなのが明るくて良いです。
最後の大団円の後、灼華に恋心を持っていた甥の皇帝が、叔父が命を賭けて自分の皇帝の地位の安泰を守ってくれたことや、灼華も地方の飢饉に同行して活躍したり、有能な官僚として貢献してくれていること、二人の絆に感嘆して、自ら二人の結婚式の準備を整え、結婚後も女性が官僚を辞めなくて良いと法律を変えてくれました。
絹布、真珠など結婚祝いの品々を赤い木箱に用意させている若い皇帝は、おそらく年齢は灼華と同じくらい、部下が小さめの赤い木箱に銀貨を詰めたものを差し出した時、ふふっと笑ってそれも贈り物の箱に入れるシーンがちょっと笑えました。伏線は、叔父と灼華が交際しているとは知らない皇帝が、一位で科挙に合格した沈に、「灼華の好きなものは何だ?」とお酒を飲みながら尋ねたら、「なぜ陛下はご自分で聞かれないのですか?」と言われ、「びっくりさせたいから。」と答えたら、沈が「お金」と答えて、「それ以外は知らない。」と答えたシーンがあったのです。
鍼の場面も時々出てきます。私も10年以上毎週鍼灸に通った経験から、興味深く見ました。王族専用の鍼灸の鍼、王族専用の医薬院、ハーブなど。つまり定王と灼華は、どちらも太后に肉親を殺された被害者だったのです。皇帝が怒りのあまり憤死したように、中医学だと悲しみは肺にダメージが来る、怒りは肝臓にくる、恐れは腎臓に、悩みは脾臓にくるそうです。
敵国に宮廷の内情を漏らすスパイは、古代から実際にあったようです。小林惠子元岡山大助教授の著書でも、天武天皇が琵琶湖のあたりを通って海沿いに大陸へ逃亡中に、それを内通した者がいて(犯人はおそらく側室の誰か)、唐の軍隊に討ち取られたと書かれていました。本では高松塚古墳被葬者が、天武天皇だと書かれています。そして首がなかったことも。この時代、首がないと転生できないと考えられていたのだそうです。
日本の時代劇ドラマだと、天皇や将軍に召し出されたら否応なく側室にならざるを得ないのに、中国ドラマでは往々にして、皇帝でも相手の女性に何度も聞いて確認するのですね。本当の愛情があるのか、聞くのが興味深いです。また議論というのか話し合いというのか、自分がどう思っているのかしっかり説明するシーンがよく出てくるのが興味深いです。最後悪人総勢消えて、ハッピーエンドで終わるのも良いです。
定王役:馮紹峰(フォン・シャオフォン)は、1978年10月7日上海生まれ
皇帝役:周翊然(ジョウ・イーラン)は、俳優・歌手。2000年11月22日生
虎に喩えられる定王。かっこいい。ツンデレなんですが、不器用というか、女性不信だったんでしょうね。衣装と髪飾りも上品です。
灼華と知り合って以後、ここまで顔が柔和になっている。
東寺の帝釈天に似ていると思うのです。
ところどころ出てくるお屋敷の周りの風景が美しいです。
プロポーズのシーン。1度科挙合格祝いにあげた翡翠が、暗殺者から逃げる際、刀が当たって割れてしまったのを、綺麗に磨き直して、2つの飾りにして、片方ずつお守りに持っていようと言うところ。
男性の袖も、振袖くらい長いのが興味深い。女性の結婚衣装は全部が赤ではなくて、1番上が緑なんですね。
刺繍が縦に入っておしゃれ。
皇太子が自分のことを言う場合、本宮と言うのですね。朕は皇帝だけが使う。帝王は自分のことを本王と言っていました。
皇太子の衣装が薄い桜色と小豆色で綺麗。スカートのように広がるんですね。
父と息子では、同じ皇帝でも髪飾りと色も違いますね。年齢によるのかしら。
黒幕 劉咬公主。女性の名前に咬という文字をつけるセンスがわからないです。