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「隠された神々 古代信仰と陰陽五行」

吉野裕子著 河出文庫 2004

 

扇子の見立ては、落語家もされますね。三角形は女性のデルタ地帯を表す、とは谷戸貞彦氏も書かれていました。これらを頭に入れてから、縄文土器をもう一度見ると、ドーナツはあちこちについています。丸い形はほとんど女性性器を表し、蛇は男性自身を表している。子宝信仰を表現したのが縄文土器だったのですね。餅つきがそういう意味であったとは知りませんでした。渦巻き模様は海を表すのかと思いきや(海の渦巻きから形象は採用しているけれども)、蛇のとぐろ巻きも表し、妊娠祈願のため、と谷戸氏は考えているのですね。

 

谷戸氏と吉野氏は共通する見解を持たれていますので、ここに二冊の似たところを書き出します。

 

「サルタ彦大神と竜」から

 

p52 +の形はXの形と同じく、異性との交合を意味する。

p113 ナイジェリアの伝統衣装の三重丸の柄は、外側は大陰茎を、中丸が小陰唇、内丸の中央が赤ん坊の頭である。三重丸は古代には「出産印」と呼ばれた。

p126、谷戸氏はX印は交合を表し、ドーナツ型はホトを指すと書かれています。臼はホト、杵はオハセを意味し、臼をつくのは交合のこと。

p210 男の種水が奥深く入った時だけ妊娠すると考えた。子宝が欲しい時に、水の渦巻きを見て水が深く吸い込まれる様子に男は憧れた。渦巻きは妊娠を祈願して描かれた。同時に蛇がとぐろを巻いている様子でもある。

 

「隠された神々」から

p12 古代日本人が作り出した文化の型の特徴をあげるとすれば、「見立て」をあげたい。日本舞踊を例にとるならば、一本の舞扇は傘に、酒器に、筆に、短冊に、手鏡にと見立てられ、その扱い方によっては扇はさらに雨、落花、流水をあらわし、また抽象的な事象をさえ表現する。古代日本人は抽象的な考えを何かになぞらえ、それからの連想によって捉えようとした人々だったと思う。「擬き好き」「連想好き」であって、それが日本人の原初的心情なのである。

p14 人の出生の原点は母の胎、つまり穴である。神の来迎が人の生誕に結びつけて考えられていたとすれば、祭りの最初の段階に穴があることは、極めて自然な成り行きであろう。

p15 渓谷、手の股、足の股間はいずれもV字型を連想させる。谷は山と山とがせまりあった窪みを意味し、典型的なV字の象徴である。クラは谷の古語とも言われている。V字型は三角形であり、沖縄では三角形は女陰をあらわすものとされている。

p21 同じ蛇から出発しながら、各民族の宗教・信仰は異なる発展をする。日本古代信仰は蛇の形からは男根を、脱皮するその生態からは出産を連想し、蛇を男女の祖先神に分ったと思われる。(拙著「祭りの原理」蛇参照)

日本の古代信仰における祭りの大きな特色は、神を目にみえる形にして顕現させ、それを鄭重に迎えて饗応し、授福を願って再び常世国に送り出す、ということにつきると思われる。

第一型 男女の祖先神としての蛇を、何らかの方法でそのまま顕現させる型

第二型 男祖先神としての蛇と、巫女の交合により、巫女が神を妊り、最終的には巫女が自ら神として、み生れして世に臨む型

第一型が蛇型と刷れば、第二型は巫女型といえよう。巫女型における蛇は、聖域における神木だと私は思う。