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「謎のアジア納豆」

高野秀行著 新潮文庫 2020

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アジアの山岳地帯に住む少数民族の人々が、日本人よりもバラエティに富んだ手作り納豆食生活を営んでいることが実体験された旅。

岩手県西和賀で、雪を1m掘って、そこに藁を敷いて大豆を茹でたものと暖かいお鍋を入れて作る雪納豆を作っていたご夫婦や、秋田県大曲で食べられている納豆汁が、かつて日本人の主流の食べ方だった話。秋田南部では正月にお雑煮を食べる習慣はなく、餅はおやつのように食べるとか。横手市では、冠婚葬祭や行事、正月に納豆汁が欠かせない。異民族の名残を残す人々に思えたとか。

大曲で目が鳶色のロシア人ぽい風貌の男性に世話になったことが書かれていますが、小林惠子説なら、吐蕃民族が東北に住んでいたので、吐蕃の末裔かもしれません。秋田には時々目の青い人がいる、という話はネットでも読みました。

私は、ミャンマーのナガ族が古代日本に来て、長野ナガノという土地名をつけた、と妄想してみました。ナーガといえば蛇のことですよね。神社のしめ縄は、二匹の交尾する蛇を表していると言いますし。アジアの少数民族は、藍染や顔つきなど日本人と似ているところがあります。タイの高級竹細工のバッグは有名ですが、日本にも何万円もする竹の虫籠がありますね。

そのほか、ブータン、中国湖南省の苗族自治州、鳳凰古城でも納豆を食べる人々がいることが取材されています。

納豆合宿も長野でされて、最終的には、縄文人は茹でた大豆をトチノキの葉で包み、納豆を作って食べていた、という結論になっています。身近な納豆が、実はアジアの僻地で日常的に食されていたのみならず、起源は縄文時代から、という思いもしなかった史実を知って、続編も楽しみです。

 

p283 日本では煮豆は一貫して馬の餌であったという。江戸時代以前、馬は主に戦闘用だった。馬、煮豆、戦をセットとして考えるのは合理的なのだ。

p286 最初に納豆を食べたのは義家でも部下でもなかったと思う。馬だ。古代日本における秋田県南部は、現代のミャンマーにおけるシャン州に似ている。地理的にはどちらも東北地方。ともに冷涼で海から遠い内陸の盆地。住んでいたのは中央政府がある平野の住人とは別の民族。シャン州はイギリス統治時代に辺境とされ、平野部の直轄植民地であるビルマ管区とは区別されていた。古代日本では、秋田県岩手県は文字通り辺境と呼ばれていた。中央政府同化政策をとり、地元民族を圧迫した。シャン州ではシャン族やパオ族などの少数民族秋田県南部では蝦夷。通訳を使ったという記録が残っているので、日本語とは系統を異にする言語を話す民族、つまり異民族が含まれていたと思われる。

p290 納豆民族はアジア大陸では等しく国内マイノリティにして辺境の民である。

p291 蝦夷が最初の納豆民だと考えると、つい2、30年ほど前まで、納豆がもっぱら東日本の食べ物だったということが説明できる。

p292 「納豆沿革史」に夜と、前九年の役で義家軍に捕らえられ、太宰府に流された安倍宗任は日田地方(大分県日田市)に東北納豆の製法を広めたとする伝説があるという。

p313 千利休は茶会で使った料理の献立を書き残している。「利休百会記」と呼ばれるこの記録には、納豆汁が全部で7回登場する。納豆汁が冬だけの料理であることを考えれば随分多い。

p330 ナガ山地では、日本軍と連合軍が現地のナガ族の人々を巻き込んで死闘を繰り広げていた。皮肉なことに連合軍側ではジャングル戦に長けたグルカ兵が奮闘していた。三者全員が納豆民族であり、インパール作戦の悲劇は納豆民族の悲劇でもあった。

p458 「ここまでわかった!縄文人の植物利用」熊本大学考古学研究者 小畑弘巳先生に寄れば縄文人は、大豆を食べていたことが明らかになった。

p459 圧痕レプリカ法による調査の結果、黄河流域、朝鮮半島、日本とそれぞれ独自に栽培化されたことがわかった。豆の形が異なるのである。日本も大豆の起源地の一つなのだ。しかも中国や朝鮮半島とほぼ同時期か、若干早いくらいらしい。

p475 気になるのはブータンのチーズ入り納豆と朝鮮半島のチョングッチャンだ。それから西アフリカで広く食されているという納豆「ダワダワ」。中世マリ王国の都トンブクトゥでアフリカン納豆を食べてみたい。

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次々にアジアの奥地で手作りされている納豆を取材に行かれるのですが、その様子がとても楽しそう。

ネパールのビラトナガルにキネマと呼ばれる納豆を探しに。中央の著者と、右端の現地の男性が、なぜか双子のようにそっくり。

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